(2012.5.15公開)
 追良瀬川林道
  (前編)


青森県内の森林鉄道・軌道は津軽半島及び下北半島に多く存在していますが、青森県西部にもいくつかの軌道が存在していました。その中で一番延長が長いのが追良瀬川林道です。追良瀬川沿いを約17㎞さかのぼり、白神山地へと進んでいきます。

初調査は2004年7月で、その後数回調査を行い、2011年にようやく遺構を見つけることが出来ました。調査にあたっては、「山さ行がねが」管理人のヨッキれん氏からいただいた情報が大変役に立ちました。ありがとうございました。
この地図の作成に当たっては、国土地理院長の承認を得て、同院発行の数値地図200000(地図画像)、数値地図25000(地図画像)、数値地図25000(地名・公共施設)、数値地図250mメッシュ(標高)及び数値地図50mメッシュ(標高)を使用した。(承認番号 平23情使、第705号)


調査結果は前編、後編の2回に分けて掲載していきますが、より詳細な内容は「日本の廃道」第68号、69号(ヨッ
キれん氏が執筆しています)に掲載されていると思われますので、そちらをご覧いただければよろしいかと思います。


① 2009年までの調査

追良瀬川林道の起点は、JR五能線の追良瀬駅付近です。

写真には写っていませんが、駅の前は海が見え、とてもよい景色になっています。

駅のホームから鰺ヶ沢方向を撮影しました。
近所の方に聞いたところ、昔は写真の右側に貯木場があり、切り出した木材を五能線で運搬していたそうです。


貯木場の名残でしょうか。駅の周囲にはレールを活用した柵が残っていました。


軌道は駅から追良瀬川沿いに進んでいたようですが、途中の松原集落(写真右)までは道路が舗装されており、特に遺構は無さそうでした。


松原集落を過ぎると、未舗装になりますが、それでも道路の幅が広く、まだまだ軌道跡の雰囲気がでません。

正面には採石場らしきものが見えます。


採石場から先は、車での進入が出来ないので、チャリに乗り換えて調査を行いました。
この地図の作成に当たっては、国土地理院長の承認を得て、同院発行の数値地図200000(地図画像)、数値地図25000(地図画像)、数値地図25000(地名・公共施設)、数値地図250mメッシュ(標高)及び数値地図50mメッシュ(標高)を使用した。(承認番号 平23情使、第705号)


チャリで先に進む前に、川原に行ってみると、流されてきたと思われるレールがありました。


林道と追良瀬川の間にわずかな空間を見つけました。ここが軌道跡と思われます。
川には何か橋脚を固定するようなものが横たわっていましたが、ちょっと小さいので、軌道と関係が無いかな?


カラカワ沢を渡る箇所には、築堤のように盛り上がっている箇所があり、よく見ると、石垣のような跡が見られました。ここが軌道跡と思われます。また、築堤の上には何かの固まりがありました。


築堤の上には、穴が3つ開いたコンクリートの固まりがありました。先ほどの物より大きく、今まで他の軌道跡でもよく見かけた橋脚を固定する台と同じようですが、軌道の遺構なのでしょうか?

しかし、どうやってこの築堤の上に乗ったのかが不思議です。


軌道跡は再び現林道に同化して進みます。

「路肩弱し」の看板があり、だんだんそれらしくなってきました。


2㎞ほど走ってちょっと疲れました。何も変化がない景色が続いていたのですが、奥に大きめの堰が見えてきました。
林道の傍らに、何かの材料として加工されたと思われるレールがあり、この先にも何かあるかと期待させます。


堰を越えたところに吊り橋がありました。とりあえず軌道とは関係なさそうです。


ちなみに吊り橋入り口はロープが張ってあり入ることはできません。踏み板がちょっとボロくなっていたり、数枚無くなっている箇所がありますが、何とか渡れそうな感じがします。


だんだん道が狭くなってきました。

ガードレールが設置されており、かつてはここまで自動車が通行していたと思われますが、現在は自動車で進むのは不可能です。


とうとう徒歩道のようになってしまいました。

軌道跡はここなのかと思って進んできたのですが、この先は行き止まりとなっていました。

間違ったかな?


川方向に一段下がった所に空間を見つけました。ここが軌道跡のようです。


軌道跡は川から少し高い箇所を通っていきます。

このまま順調に進めるかと期待していたのですが…。


残念ながら、崖崩れで先に進めなくなりました。

軌道は川から少し高い箇所を通っていたと思われますが、ここからでは先にそれらしき跡を判別することは出来ませんでした。

先に進もうと、いろいろチャレンジしましたが、上部は急斜面、下部は川でスペースがなく無理でした。


崖崩れの下をのぞき込むと、何本かのレールがありました。

レールがまっすぐなまま残っているので、敷かれていたものが、崖くずれでそのまま落ちたのでしょうか?


また、崩れた箇所をよく見ると、枕木も残っていました。

レールや枕木の残り方を見ると、林道廃止後、しばらくレールは撤去されずに残されていたと推測されます。

この先には、もっと何かが残っていると確信し、先に進むことを試みました。


対岸に渡って進むことを考えましたが、雪解け水がゴウゴウと音を立てて大量に流れているので、あきらめることにしました。

帰りがけに、地元のおじさんに話を聞いたところ、「もっと奥に行けるけど、軌道跡は少ししかない」とのことでした。

しかし、「少ししかない」という言葉を聞いて、逆に思った以上に何かあるのでは?、と感じました。

水量が少なくなるのを待って再調査です。


②1年後の2010年6月に再調査

前回調査終了地点にやってきました。

1年前に比べ水量が少なく、流れがある程度穏やかになったので、田植長を履いて対岸に渡ることが出来ました。


対岸は、歩きやすい川原になっており、崖崩れがあった箇所をクリアして進むことが出来ました。

崖崩れ箇所から先は、軌道跡が明確に現れてきました。写真左に取り外された数本のレールが見えます。


いよいよ本格的に進んで調査だ、と思ったのですが、水深が深く、軌道があった対岸へ戻ることが出来ませんでした。

写真では水深はたいしたことが無さそうに見えますが、意外と深く、また流れも強かったです。

結局、前回調査地点から300mしか進むことが出来ませんでした…トホホ。


③しつこく2011年6月に再調査

田植長にゴアテックスをガムテープでくっつけるという荒技で川を渡ることに成功しました。

しかし、川を甘く見ていた装備のため、長靴の中に浸水しグチョグチョになってしまいしました。アホでした。

先に進みましたが軌道跡が明確に分かります。


何か見つかるかと期待して進むと、岩があちこちにゴロゴロと見られました。

歩きにくいなぁーと、足下を見てみると、そこには遺構がありました。


レールがそのまま取り外されずに残っていました。
久しぶりの発見で大興奮です!

ここに来るまでに数カ所で地面を掘ってみましたが、レールは見つかりませんでした。

どうやらこの岩地帯からレールが残っているようです。


森の奥地に進む軌道といった感じで、いい雰囲気です。


しかし、先に進むと土砂崩れになっており、ぎりぎり歩けるような状態でした。

レールも土砂に埋まっているようでした。


頑張って進み、センノ沢を渡ります。

沢にはレール1本だけが渡されて残っており、驚きの光景でした。


沢に降りて撮影しました。

レール1本なので、ネズミやリスならば渡ることが出来るかと思いますが…。


さらに進むと、またしても崖崩れになっており、軌道跡が分からなくなってしまいました。

川から少し高い位置のため、どう進むか考えていたところ、釣り人が設置したと思われるロープがあり、川原に降りて進むことができました。


しばらく進み、川原から上がると、いい感じでレールが残されていました。枕木もしっかりと残っています。


先は草むらになっていますが、その下にはレールが敷かれたまま残っています。

草が無ければステキな景色になったと思います。


まだまだ進めそうでしたが、この先は、またしても崖崩れとなっており、進むことが出来ませんでした。


対岸へ渡ろうと思い川原へ降りると、レールが転がっていました。


対岸へ渡れば、先に進めそうです。

しかし、前日に降った雨のせいで、水量が増していることや、ショボい装備で進むことは危険と判断し、断念しました。

釣りをしている人に軌道の話を聞いたのですが、特に有益な情報は得られませんでした。ちなみに私のショボい田植長を見て失笑していました。


④ オサナメ沢支線

追良瀬川林道の調査をあきらめて、帰りにオサナメ沢支線の調査を行いました。

林道入り口です。「山火事用心」や「全期間禁漁」などの看板がありました。


普通の林道をどんどん進むと、急な坂道の手前で、右側に怪しい空間を発見しました。

軌道が急な坂道を上がるとは考えにくいので、右側の空間を進んでみました。


特に遺構を見つけることが出来ませんでしたが、この空間は軌道跡ではないでしょうか?


軌道跡と思われる空間はまだ先に続いており、沢のすぐ脇を通っていました。


堀割のような箇所もありましたが、この先の軌道跡は判然としませんでした。

あきらめて林道に戻り、先に進みましたが、特に遺構を見つけることが出来ず、引き返しました。


2011年6月の調査では、ようやく敷設されているレールを発見することが出来ましたが、前回調査から1㎞しか進んでいません。地図を見ると軌道跡はまだ3㎞以上も続いているようです。

この先も崖崩れが何カ所あるのでしょうか?どんな装備で進めばよいのか?何かヒントがないと、またしても調査やりなおしになってしまいます。

自分の中では『他の人が調査した内容をあまり見ないで調査する』というルールを作っているのですが、今回だけは降参することにします。この調査の1週間前の2011年6月19日に、「山さ行がねか」の管理人のヨッキれん氏のツイッターで、追良瀬川林道を調査したとの書き込みがありましたので、どんな感じかメールで聞いてみました。聞いた内容は以下のとおりです。





吊り橋から終点付近までは、行きは調査をしながら進み4時間40分、帰りは3時間10分で、合計で8時間かかったとのこと。
非常に川が滑りやすいので、フェルト敷きの沢靴は必須。
川を片道10回以上は渡る必要があり、一番深いところでへそまで水が来たとのこと。また、水量が増す雨天後は終点まで行くことがほぼ無理で、春の雪解け時や梅雨時も危険だとのこと。


大変貴重な情報をいただき、とても参考になりました。

以上のことから、調査を進めるにはそれなりの覚悟が必要です。ウェーダーを準備し、水量が少ない降雪前の11月に調査を行うこととしました。

ウェーダーは新品だと高いので、ネットオークションで中古をゲットしました…トホホ。


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( 線名 地図 )