(2018.8.12 公開)
黄瀬林道(斜面軌道)・黄瀬平林道
この地図はカシミール3D「山旅倶楽部」を使用して作成しました。

今回紹介する軌道は、謎の多い旧三本木営林署管内に存在した黄瀬林道(斜面軌道)と黄瀬平林道です。インクラインを「斜面軌道」って表現しているのがイケてます。

起点の奥入瀬貯木場からは「黄瀬林道(斜面軌道)418m」で進み、高度を上げた後は「黄瀬平林道(7,202m)」で進みます。昭和9年頃開設で、昭和22年廃止、翌年には軌道撤去されています。

2012年に発行された「近代化遺産 国有林森林鉄道全データ東北編」を見れば路線名や軌道位置が記載されていますが、調査を始めた2003年頃には軌道に関する資料がほとんどありませんでした。

そのため、軌道の存在は、古本屋で見つけた青森営林局管内図(右の地図)で初めて知りました。とてもラフに記載されていますが、まずはこれで大まかな場所をつかみ、その後、青森森林管理局で閲覧させていただいた昔の資料等の内容から軌道の位置を推定しました。

しかし、それでも明確な位置は分からないままでの調査スタートなので、果たして軌道跡を見つけることができるのか?とにかく行ってみよう!

調査は2004年から数回に分けて行いました。

青森営林局管内図(昭和12年7月調製)から抜粋


1 黄瀬林道(斜面軌道)

最初の現地調査時にはインクラインがあることが分からなかったので、ちょっと混乱しました。

この林道の延長はわずか418mですが、その間に結構遺構を見つけることができました。
この地図はカシミール3D「山旅倶楽部」を使用して作成しました。


スタート地点付近です。黄瀬林道のレポートでも紹介したゲートがある場所と同じです。

黄瀬林道はこのまま直進ですが、斜面軌道はこの手前を右方向に進みます。


ホントに軌道跡があるのか不安でしたが、右側に怪しい空間がすくに現れました。


笹藪をこいで進みます。写真では見えていませんが、すぐ先は黄瀬川に突き当たります。

そこには、遺構がいきなり現れます。


なんと、橋台が残されていました。

起点から適当に進み、10分もかからないうちに遺構を発見です。情報が少ない中、いきなり遺構を発見できてびっくりです。


黄瀬川上流から撮影しました。写真中央が橋台ですが、結構大きくしっかりしています。


橋台の周辺をウロウロすると、下流にコンクリート構築物が横たわってました。おそらく橋の途中にあった橋脚の一部と思われます。 橋台も一緒に撮影しました。

直線的に加工されたコンクリート橋脚の様子がよく分かります。


さて、対岸ですが、かろうじて橋台が残されていました。

とりあえず、よじ登って軌道跡を確認します。


軌道跡は、築堤の上を笹藪となって続いています。

進みにくそうですし、このまま進んでも面白く無さそうなのでいったん離脱します。


軌道跡は結構な高さの築堤となっていました。

起点方向を見ると、石垣が続いておりいい感じです。


石垣の間から、木が生えている箇所も見られました。

他の軌道跡でもよく見られる、毎度おなじみです。


石垣をよく見ると、真ん中にラインがあり上下に分かれています。構造上、何か意味があったのでしょうか?

下が完成した後に、高さが足りなくて付け足したとか?下部は特に頑丈に造ったとか?…わからん。


先を見ると、石垣が崩れている部分はありますが、築堤はまだ続いています。 しかし、築堤は突然途切れてしまいました。ここで終わりなのでしょうか?


築堤の先は枯れた川になっていました。地図に記載がないので、しばらくの間、混乱してしまいました。

写真右側の黒っぽい部分が築堤終点で、左側の木に向かって枯れた川を渡っていたようです。

この途中に橋脚跡を見つけることはできませんでした。


枯れた川を渡った対岸には橋台が残されていました。これまた大きいです。

ここまで起点から半径約200m以内ですが、遺構がたくさん残されていて楽しいです。

この先は、地図では斜面になっておりどのように進むのか気になります。


橋台に登って斜面を見上げると、空間が見られました。

周りの平場には軌道跡らしき物がなかったので、この空間が軌道跡、即ち斜面軌道(インクライン)のようです。

2004年の最初の調査時にはインクラインの情報も無く、半信半疑で感動もそれほどありませんでした。


まっ、とりあえず斜面に突撃じゃー。

笹藪が行く手を阻みますが、がんがん進みます。


はあはあ…。インクライン跡はなかなかの急斜面ですが、堀割のようになっており意外と進みやすいです。 斜面を登って振り返って撮影しました。高さを感じることができるでしょうか?


登りはじめてから5分ほどすると、目の前に木々が生えており行き止まりとなっていました。20〜30mしか登っていないような感じで、意外とあっさり終わっちゃった?

付近の平場を探索してみましたが、軌道跡は見あたりません。この先どこに進んでいたか分からず、2004年の最初の調査時は、ここであきらめて引き返しました。

帰ってからの机上調査でインクラインの存在を知りました。しかし、前回調査終了地点までの距離は、記録に残っている418mより短い感じがするので、まだ先にインクラインが続いていたはずです。どこに軌道跡があるのか当てはありませんでしたが、とにかく2010年に再調査を行いました。


前の写真とほぼ同じ位置まで来ました。

インクラインの続きの正解は、なんとそのまま直進でした。驚きです。

インクライン軌道跡の道床に植林したと思われる木がすくすくと成長していました。このように軌道跡に植林するパターンは、津軽森林鉄道小股支線でも見られました。

軌道跡調査は、目の前の木に惑わされないで、足下の確認も大切であることを学びました。


少し進んで撮影しました。わずかに盛り上がっている道床部分に木が育っているのが分かるかと思います。 斜め横から見ると、盛り上がった道床を確認できます。

写真のようにインクライン跡の側面が窪地のようになっているのですが、最初は窪地だけが気になって、インクライン跡に気が付きませんでした。


斜面の写真を撮っても、うまく勾配を表現できないので、横から撮影してみました。

水平レベルは怪しいですが、こんな感じです。


どんどん斜面を登り林を抜けると、勾配がさらに急になりました。壁にへばりつくような感じです。 斜面から振り返り撮影です。なかなかの高さになっていることが分かります。


笹藪のインクライン跡を進むと、突然平場に出ました。

どうやらインクラインの終点のようです。「近代化遺産 国有林森林鉄道全データ東北編」によると、インクライン下部から標高差は127mとのことです。

残念ながらインクライン装置などの遺構を見つけられませんでした。

左手を見ると、軌道跡のような道が続いています。ここから黄瀬平林道がスタートします。


【補足】
三本木営林署管内にはインクラインが2カ所存在していました。「青森林友170号」にそのことが記載されています。

「最初のインクラインは三本木管内の黄瀬林道で上方の台地と下方の軌道を400メートルにわたって急斜面で連結したが、当時は制動機が単調だったので相当大型となり、加えて長尺のワイヤーロープが手に入らないことや、操作は熟練者でないと危険なので、海軍水兵で碇網に練達な人を迎えて講習を依頼したりした苦心があった。
 制動機についてはあとで、三相の三島式とか、相互に牽引しあい簡単に制動ができる内大臣式や、森鉄の高橋哲三技手の発明になる風車式で速力を完全に制動するものなどができて、これは黄瀬林道の第二インクラインに取り付けられた。」

どっちも「黄瀬林道」でわかりにくくなっていますが、軌道が設置された順番から考えると、「最初のインクライン」は、以前レポートした黄瀬林道から分岐した木炭搬出用軌道で、「第二インクライン」は今回紹介した黄瀬林道(斜面軌道)と思われます。


  2 黄瀬平林道

斜面軌道の終点@から北西方向へ進みます。
この地図はカシミール3D「山旅倶楽部」を使用して作成しました。


インクライン上部から軌道跡が続いていましたがどこへ行くのか?情報が無いまま進みます。


倒木などがあり通りにくくなっていますが、インクライン勾配に比べればへっちゃらです。

しかし、どんどんうっそうとした森の中に進み、ちょっと怖くなってきました。


しばらく進むと、笹藪地帯に突入しました。

軌道跡を見失ったかと不安になりましたが、無理矢理突き進むと地図に記載のないヒナタ沢林道(A地点)に出ました。

以前通った事のある林道だったので、一安心です。しかし、車は黄瀬林道起点に置きっぱなしなので、結局再びインクライン跡を通りいったん戻りました…トホホ。


蔦温泉方面から車でぐるっと回り込み、ヒナタ沢林道を南下して一度A地点に行き、北上しました。

林道がそのまま軌道跡となっているようですが、途中までです。B地点から軌道は写真の左側を進みます。
ヒナタ沢林道から外れた左側には笹藪が続く空間が現れます。軌道跡と思われますが、危険そうな感じがしたので進みませんでした。


3 蔦温泉方面から南下

蔦温泉付近から蔦沼林道を通って上部に来ました。まずは蔦沼林道沿いをウロウロしました。
この地図はカシミール3D「山旅倶楽部」を使用して作成しました。


C地点でちょっと怪しそうな空間を見つけました。笹藪を突き進みます。


目の前に一筋の空間が現れました。先に進むと小さな堀割のようになっており、ここが軌道跡と確信しました。


いい感じで進んでいけると思ったのですが、林の先は伐採作業中でした。遠くに小さく集材機が見えています。

軌道跡は伐採現場の端の方にあったのですが、作業の邪魔になるといけないので、この先は日を改めて調査することにしました。


しかし、1年後に再訪したときは、C地点の前回見つけた軌道跡付近の木々も含めてハゲチョビンになっており、軌道跡が分からなくなってしまいました…トホホ。

いつも思うのですが、もっと早く調査しておけば良かったです。

2枚前の写真とほぼ同じ位置で撮影しました。すっかり見通しが良くなってしまいました。
(カーソルを合わせると1年前の写真を表示します。)


1年前は軌道跡がはっきり見えていたはずなのですが、どこなのかよく分かりません。 盛り上がっている箇所は、築堤のようになっている軌道跡かもしれません。

伐採地を通過後にC地点方向を撮影しました。右に見えているのはヒナタ沢林道です。

軌道跡は伐採地と遠くに見える林との境目付近を通っていたと思われます。
軌道跡はいったんヒナタ沢林道付近にに合流した後、D地点の西方面の林の中へ続いていました。

この先は別方向から確認することにしました。


E地点からは、国土地理院の地図には記載がない滝ノ沢取水口へ向かう作業道があります。

そこを進んでみると、F地点で軌道跡を確認できました。まずは伐採地方面、北に進みます。


笹藪を突き進むと行き止まりのようになっていましたが、よく見るとまだ先に続いています。 緩い斜面になり、左方向に高度を上げて進みます。


左に進んだ後は、今度は右へヘアピンカーブで進んでいきます。

右側の林の奥にうっすらと軌道跡が確認できます。


ヘアピンカーブを登ると平坦になり、先ほどのD地点へと続きます。


F地点に戻り、南方面の軌道跡も確認しました。

なかなかいい雰囲気だったのですが、しばらく進むと右写真のようにちょっとやばそうになってきたので引き返しました。


F地点方面に振り返って撮影しました。

左側の林の存在が真っ直ぐのびる軌道跡を引き立てていていい感じです。


4 伐採地から蔦沼林道を西へ

伐採地から西側への軌道跡は、現在は蔦沼林道となっており、特に面白いものは見あたらないなー、と思っていると、滝ノ沢にいきなり橋脚跡が現れます。
この地図はカシミール3D「山旅倶楽部」を使用して作成しました。



(起点側)

(終点側)

橋の上から橋脚を撮影しました。撮影は2011年です。カーソルを合わせると2015年の状態を表示します。


上の写真では状況が分かりにくいので、橋から降りて撮影しました。

橋の下流側にありますので、普通に林道を通っていてもすぐに分かります。


近づくと、結構ボロボロになっているのが確認できます。昭和9年頃に竣工したとすれば、80年弱経っているのでこんなものなのでしょうか。


終点方向から撮影しました。

これからも頑張って残っていてね〜。


滝ノ沢を越えた先の林道はこんな感じで、進みやすくなっています。

秋なのでなんか寂しい風景ですが、軌道跡調査にはもってこいの季節です。


次に、鍋倉沢を渡ります。

橋から鍋倉沢の下流方向をチラッと見ても何も無かったので通り過ぎたのですが、しばらく進んでから振り返ると軌道跡らしき空間がありました。


空間を進み鍋倉沢へ出ると、ここにも橋脚跡がありました。

林道の橋からはちょっと見えにくい位置で気が付きませんでした。


起点側の橋脚は残されていましたが、先ほどの滝ノ沢の橋脚より小さいです。


終点側の橋脚は土台部分しか残っていませんでしたが、近くには橋桁と思われる金具付きの木片が落ちていました。


湧口沢林道との分岐点です。軌道跡は右の道を進みます。

湧口沢林道は、黄瀬林道のレポートで紹介した松見の滝への近道になります。林道終点から徒歩で1時間ちょっとで松見の滝に着きます。


さて、軌道跡をちょっと進んでみましたが、何も無さそうなので調査を終えて引き返しました。


10年以上にわたり机上調査や現地調査を行い、謎だった林道の存在を少しづつ明らかにすることができました。

インクラインについては、自分でもよく見つけることができたなー!と思っていましたが、発見時はGPSを持っていなかったので、位置確認の為だけにGPS購入後の2013年に再訪して登り降りして疲れたぜ…トホホ…。

( 線名 地図 )