(2005.10.17公開)
その1

机上調査では、昔の20万分の1の地図や営林署管内図でしか軌道があったことが確認できませんでした。そのため詳しい軌道跡はわからなかったのですが、おそらく現在の2万5千分の1の地図で川沿いの道(幅員1.5m未満の点線の道)として記載されている箇所が軌道跡と考えられます。
 
この地図の作成に当たっては、国土地理院長の承認を得て、同院発行の数値地図200000(地図画像)、数値地図25000(地図画像)、数値地図25000(地名・公共施設)、数値地図250mメッシュ(標高)及び数値地図50mメッシュ(標高)を使用したものである。(承認番号 平17総使、第726号)
 この林道は小泊海岸林道終点から山側に進みます。川は「傾り石沢」、海岸にある石は「傾り石」と書きますが、林道名は「片刈石」と書きます。かつて吉田松陰がここから算用子峠を経て三厩村に抜けたそうで、現在はみちのく松蔭道として整備?されています。今回紹介する林道もその一部となっています。
2003年4月に初めて訪れた時、国道から林道入り口を撮った写真です。4月ということもあって緑が少なく岩がむき出しで殺風景です。

ちなみにこのときは時間もなく、この写真を撮っただけで帰りました。

夏に再び訪れました。現在の林道は2万5千分の1の地図には記載されておらず、ちょっと混乱しました。

林道は川を渡った後、ヘアピンカーブで進行方向を変えながら高度をとっていきます。

写真は坂を登っていく林道から川の上流方向を撮ったものです。

軌道跡と思われる道は、地図では川沿いに記載されていますが、それらしい道は見あたりませんでした。

その後林道は途中で川沿いの旧林道と合流し、奥へと進んでいきますが、特に軌道があった証拠となるものを見つけられませんでした。

軌道跡はこの先も続きますが、何もなさそうなので引き返しました。とにかくここまで来るにも道床がデコボコしていて車で進むのは酷だったと記憶しています。

帰りに川沿いの旧林道を調べようと思ったのですが、狭くて車が行けそうもないのでやめました…(歩いていけば良かった…トホホ)。

ということで、調査は終わったのですが、2枚目の写真をよく見ると石垣のようなものがあり、とても気になります。

仮にこの下を軌道が通っていたとしても、ずいぶん高い位置まで石垣があり不自然なような感じが…?モヤモヤしたまま調査を終えました。


その後、気になったのでいろいろと調べてみると、この林道にはスイッチバックがあったことがわかりました。

沢の勾配が急になる区間について、ループやトンネルを設置して進むことを検討したのですが、無理だったためスイッチバックとしたようです。

この事実を知ったのが冬だったので、春を待って再調査することにしました。

最初の調査から1年2ヶ月後の2004年5月に再び訪れました。

スイッチバックの軌跡が逆Z字を描いているのが想像できます。3段スイッチバックのようです。

※カーソルを合わせると、軌道跡を示します。

現林道からスイッチバック跡を撮影しました。写真の線のように軌道が続いていたと思われます。

※カーソルを合わせると、軌道跡を示します。

林道からスイッチバックの跡へと向かう途中、枕木を発見しました。棒きれのように見えますが、きちんと犬釘が打ち込まれています。

スイッチバックの1段目(一番下)を進み、まずはこのまま先端まで行ってみることにしました。

反対方向に振り返っての写真です。写真左側の草が生えている所が1段目、右上の石垣の下が2段目の軌道跡と思われます。

わかりにくいのですが、写真奥には現在の林道が見えます。

スイッチバック1段目の先端付近です。枕木が残っているのがわかります。

おそらくこの付近が2段目との切り替えがあったと思われます。しかし、これより後ろは川になっており、スイッチバックに必要な引き込み線のスペースがないように思えます。

そこで川の方へ進んでみると…

※カーソルを合わせると、軌道跡を示します。

なんと橋の跡を発見しました。ここには橋台や桁?、レールの残骸が残っていました。

おそらくこの橋まで引き込み線であったと思われます。

橋の跡から川の上流部を撮影しました。

スイッチバックがあると仮定しての調査なので、関係ない写真ですが、もしかすると橋を渡ってこのまま進んでいたということも考えられますが…?

2段目を進んで写真を撮りました。

石垣というより石を積んで斜面を補強しているようです。石はわりとしっかりと組んであるようですが、一部は手前のように崩れてしまっています。

石が崩れた下には、枕木が残っていました。

さらに進んで振り返って撮影しました。

斜面を覆っている石はよく見るとレールと金網で補強してあります。このレールでの補強は軌道布設時からあったかどうかはわかりません。(各地では軌道撤収後の林道で、古レールを活用した橋などはあったようですが…)

よく見ると写真奥に山菜採りオヤジが2人写っています。私の横を通り過ぎる時の変なものをみるような眼差しが痛かったです。

写真ではわかりにくいですが、海方面をみるととてもいい眺めです。

軌道はおそらく川の右岸を通っていたと思われますが、跡はわかりませんでした。

3段目へも続くのですが、何となく危険そうだったのでやめました。写真では簡単に登っていけるように見えますが、以外と急斜面でした。

現林道からスイッチバック上部を撮影しました。このままの高度を保ちながら川沿いに進んでいるようです。

このスイッチバックの近くに縄文沼があり、そちらから回り込んで軌道跡を探してみましたが、はっきりとわかる形跡は発見できませんでした。

ということで、スイッチバックの跡を見つけただけで満足して調査を終了しちゃいました。

しかし、机上調査で、奥部にもスイッチバックを設けていたことがわかりましたので、まだ遺構はあるかもしれません。

※カーソルを合わせると、軌道跡を示します。

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( 線名 地図 )